在外子女教育を考える

〜日本語習得に重要な「読み」と「書き」

 

米日教育交流協議会
代表 丹羽筆人

 

読みながら書いて覚える地道な学習法が実を結ぶ

 言語によるコミュニケーションに必要な「読み」「書き」「聞く」「話す」という四つの技能をすべて習得することは簡単ではありません。例えば、子どもは生まれ育った家庭で聞いたり話したりする言語を「母語」として自然に習得します。生活環境が「母語」以外の言語圏であれば、その地での使用言語(第二言語)で聞いたり話したりすることを地域社会や学校などで自然に習得することもできます。しかし、母語や第二言語の「読み書き」を自然に習得することは簡単ではありません。ましてや年齢相当の実力まで高めるためにはかなりの努力が必要です。 

 自分の子どもは家庭で日本語で話すことには全く支障がない、学校や地域社会では英語でコミュニケーションをとることも問題なさそうだと思っても、文章を書かせると日本語でも英語でも意味が通らない、漢字の誤りやスペルミスが目立つという惨憺たる状況であるというケースは少なくないのです。そして、話し言葉としての日本語や英語にも、文法や発音の誤りがあるという事実にも直面するのです。例えば、子どもから「私を持っていって。」なんていう日本語を聞いたことはありませんか。

 正しい言語の習得のためには「読み書き」の力を養うことが必要だと思います。しかし、現地校に通学する子どもは、日本語での学習時間が少ない上に、漢字で書くことや文章を書くことを極端に嫌がる傾向があります。特に、私の指導教科である社会科の用語や歴史人物名などには難しい漢字も多く、できる限りひらがなで済ませようという子どもが目立ちます。ひらがなで書くことが当然となり、漢字が書けなくなってしまうどころか、漢字で書かれてあってもそれを読めない、というケースに陥りがちです。例えば、「伊能忠敬」を知っていても漢字で書けないとか、「いのうただたか」と読めないということ、「果樹園」を「かじゅうえん」と読んでしまうことはよくあることなのです。これは、海外に暮らす子どもは人名や地名など事物を表す日本語に触れる機会が少ないことによるものです。

 現在はPCで文書を作成する時代なので、書くことはそんなに重要でないという考えもあるようですが、正しい読み方を入力しなければ正しい漢字を出力することはできません。また、正しい漢字を知らなければ、漢字に変換する際に正しい選択ができません。つまり、「読み書き」は同時に習得しなければならないということです。

 そのために昔ながらの学習法ではありますが、不要になった書類の裏紙などを利用して「読みながら書いて繰り返し覚える」ことをお勧めします。また、正しい文章を書くためには有名作家の名作を多読することやその中の名文を書写することも大切です。このような地道な努力の積み重ねによって、「読み書き」の力のみならず、「聞く」「話す」力も身につくのです。

           

           ~Weekly Business News 2007年4月13日号掲載

 

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