日本の伝統文化を考える

〜民話は伝統文化を伝える大切な教科書

 

米日教育交流協議会
代表 丹羽筆人

 

民話から当時の生活の様子を知り、貴重な伝統文化を残したい

 かぐや姫の名で親しまれている竹取物語、一寸法師や桃太郎、そして、かさじぞうなどは多くの人が知る有名な民話です。子どもの頃から何度も繰り返し読んだり聞いたりして、ほぼあらすじは説明できる人も多いでしょう。しかし、これらの民話を通してさらに広がりのある学習をすることが大切だと考えています。特に、海外で生活する子どもや、日本にいるとしても都会で暮らす子どもにとって、民話は日常生活では触れることのできない日本の文化を感じる絶好の機会となります。

 例えば、竹取物語のおじいさんがかぐや姫を見つけた竹やぶは、かつては日本の各所で見られたものです。竹はどこでも簡単に手に入ることから人々の暮らしに欠かすことのできないものでした。繊維が強く丈夫であることから建材に利用できます。枝葉を取れば材木として、割れば板としての役割を果たします。また、中が空洞になっていることからパイプや容器としても使えます。さらに、細工がしやすいことから、数多くの生活用品としても利用されてきました。ざるや籠、串、釣竿、竹刀、つまよう枝、竹とんぼ、など、数え上げたらきりがありません。その他、竹炭という燃料にもなりますし、たけのこは食用として親しまれています。また、葉は薬にもなりますし、食べ物を包んだり、皿としても利用できます。つまり、竹は人々にとってとても重宝な存在なのです。

 竹取物語のおじいさんは、このような身近な竹を扱う竹職人でした。毎日竹やぶで竹を取り、その竹を利用して作ったものを売って生活していたのです。そのおじいさんの一生を変えたのが、竹の中に小さな女の子を見つけたことです。女の子は初め三寸(約9センチ)でしたが、三ヶ月で成人に成長します。これは竹が一日に一メートルも伸びることがあるという強い成長力を持っていることになぞらえているのでしょう。

 そんな竹やぶですが、現在では徐々に姿を消しつつあります。竹よりももっと軽くて丈夫で、竹にはない耐久性のあるプラスティック製品などに取って代わられてしまったからです。放置された竹やぶの竹は伸び放題となり、民家の地下から中に進入したり、他の樹木の根を枯らして地滑りの原因を起こしたり、蚊の発生源でもあったりするためにすっかり厄介ものになってしまいました。そして、宅地や耕地として姿を変えてしまったのです。

 現代社会において、竹製品がプラスティック製品に取って代わることは難しいことだと思いますが、原油価格の高騰、石油の枯渇という諸問題を鑑みると、今一度竹製品の良さを見直すべきではないかと思います。

 動植物など自然の中で生まれ育った命ある有機物でできた製品には温かさを感じます。さらに、手作りの製品には人の温かさが加わります。竹製品はもちろん、徐々に消えつつある手作りの伝統工芸を未来に継承していくことはとても大切なことだと思います。そのためには、伝統工芸品を知らない子どもたちに、それらに触れ、実際に自分の手で作ってみるという体験をさせることが必要であると考えています。そして、その大きな動機付けとなるのが民話の世界です。つまり、民話は伝統文化を伝えるための大切な教科書なのです。

 

         

         ~Weekly Business News 2007年5月11日号掲載

 

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