日本の教育事情

〜高校の履修単位不足問題を考える

 

米日教育交流協議会

代表 丹羽筆人

 

学習指導要領と大学入試制度との乖離の是正を検討すべき

 日本の高校が履修単位不足の問題で大騒ぎとなっています。該当する高校生にとっては、大学入試センター試験の出願も終わり、いよいよ本番入試に向けて最後の追い込みをかけようという時期に、高校を卒業できないかもしれないということになったのですから大変です。文部科学省の指導で、不足分の単位を取得するために急遽補習が行われているようですが、受験対策に当てる学習時間に影響を及ぼすことは間違いありません。

 と言っても、今回履修単位不足が発覚した高校では、受験対策のために学習指導要領で必須となっている科目を履修させず、その時間を受験に必要な科目の履修に当てていたのですから、その状態での卒業が認められるようなことになれば、学習指導要領の通りに履修した高校生から不公平であるという声が上がることも予想されます。

 いずれにしても、今回の騒動は受験に必要な科目に力を入れて大学の合格実績を上げたいという高校側が、国の基準を無視する行動を取っていたところに問題があると言えます。生徒や保護者は高校が決定したカリキュラムに従って学習していただけです。ただし、生徒が希望校合格を果たしてほしいという願いから、また受験科目数の多い国公立大受験者の負担を少しでも軽くしてあげたいという思いから、今回のような行動を取った高校教師を責めることは決してできないと思います。

 多くの国公立大では大学入試センター試験の出題教科・科目のうち、5教科7科目または8科目を必要としています。教科で言えば、英語、数学、国語、理科、地歴・公民のすべてが必要で、科目で言うと、数学はTとUの2科目必須、理科は文科系学部が1科目、理科系学部は2科目必須、地歴・公民は文科系学部が2科目必須、理科系学部は1科目必須というパターンとなっているのです。これに加えて、国公立の2次試験や私立大の入試のための教科学習や小論文対策も必要ですので、文科系志望者にとっての理科、理科系志望者にとっての地歴・公民の学習に対する負担は大きく、受験に必要な科目の習得すらなかなか大変なことです。そんな状況下、高校側で学習指導要領では必須となっている理科3科目を文科系志望者には2科目とする、また必須となっている世界史を理科系志望者には履修させず他の科目で充当するという配慮がなされたのでしょう。特に地方の高校では、地元国公立大学への合格を果たせない場合、浪人したり、都会の私立に進学するには経済的に難しい家庭も多く、そのような保護者の切実な声に直面している高校教師がやむなく取った行動とも言えるでしょう。

 高校側がこのような行動を取らねばならなかった背景には、「ゆとりの教育」を提唱した学習指導要領を導入し、小中学生に教科学習時間が減少する一方で、相変わらず難度の高い大学入試の出題に影響され、高校での履修内容は量的にも質的にも大きくは変わらず、むしろ高校での学習負担が増大したことがあります。学習指導要領と大学入試制度との乖離を是正を検討することが、今後の課題であると思われます。

 

                〜Weekly Business News 2006年11月3日号掲載

 

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