海外に暮らす日本人を考える
〜多種多様な異文化と日本文化の相互理解

 

米日教育交流協議会

代表 丹羽筆人

 

海外で体験した年中行事を紹介し、

真の日本の年中行事を伝承することが使命

 アメリカの年末は1031日のハロウィーンに始まり、サンクス・ギビング、クリスマス、そして、新年へと慌しく過ぎていきます。また、これらの行事では、パーティーやイベント、プレゼント交換も頻繁に行われ、年末は子供達はもちろん、大人達にとっても楽しい時期となっています。そして、この地に暮らす日本人の方々もこれらの行事を満喫しておられるのではないでしょうか。

「郷に入っては郷に従え」と言われるように、アメリカに住む人々がアメリカの年中行事を行うことは決して悪いことではありません。それは、生きた異文化を体験する絶好の機会です。最近は日本でも行われているものもあるようですが、それらの違い、歴史、目的なども、ぜひ学びたいものだと思います。例えば、日本では、パーティーをしたり、子供達がサンタからプレゼントをもらえる日となっているクリスマスは、キリスト教徒の家庭にとっては、教会で行われるミサで祈りを捧げる神聖な日です。それを知ることが真の異文化理解であり、その機会に恵まれた海外在住者が日本にいる人に伝えることが大切です。

 年中行事は、各々の民族の文化です。それらを体験することは各々の民族の文化を理解することと同様です。多種多様な人種が共生するアメリカでの生活において、多くの民族の年中行事の体験を通じて、多くの異文化を理解することを心がけたいものです。

 ところで、私達日本人は、自らの文化に根付く年中行事を正しく知り、実践しているでしょうか。例えば、年末年始は、大掃除を行い、一年間の汚れとともに、悪い出来事や悪運などを取り払い、親族が水入らずで、新しい年を迎えるというのが普通でしたが、現在では大きく様変わりし、気のあった友人達と海外や国内の温泉地やスキー場で過ごすことも多くなっています。また、節分や桃の節句、端午の節句は、子供のいない家庭では縁のない行事でしょう。春分の日や秋分の日は、先祖のお墓参りをする慣わしの日であることも、かなり薄れているような気がします。

 海外に暮らしていますと、私もそうですが、これらの年中行事を厳密に実行することは至難の業です。日系人会や日本人学校などのご尽力で、数多くの年中行事が各所で実行されておりますが、やはり、真の年中行事=真の日本の文化は、日本にいなければ体験できないと思います。さらに、それを体験できるのは、日本でも、田舎と言われる一部の地域のみです。それらの地では、古来より伝えられた年中行事を正しく受け継ぎ、実践しています。多くの日本人が、生活習慣の欧米化、技術革新による利便性を優先させるために忘れてしまった真の日本の文化の良さに気づくのは、私たちが海外に暮らす日本人だからだと思います。

 このように、海外に暮らす日本人は、そこでの生活を通じて理解した異文化を日本に紹介する一方で、真の日本の文化を自ら体験した上で、それを伝承していくための一助となる役割を担っているのではないかと思います。

 

                〜Weekly Business News 2006年11月24日号掲載

 

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