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現代社会に暮らす日本人を考える 〜アーミッシュの生活に学ぶ古き良き日本人の生活
米日教育交流協議会 代表 丹羽筆人
日本の里山での自給自足の生活疑似体験が、精神的な豊かさを育む ご存知の方も多いと思いますが、現在も近代化される以前の生活スタイルを守っているアーミッシュと呼ばれる人々の暮らす地域がアメリカにあります。特にペンシルバニア州とオハイオ州には多数のアーミッシュの人々が暮らしています。 アーミッシュの歴史は16世紀の宗教革命の頃に遡ります。カトリック教会から激しい迫害を受けたプロテスタントの中でも急進的な再洗礼派のグループの一つです。そして、迫害から逃れるために、スイスやドイツ、フランスの山岳地帯で農民として暮らすようになり、さらに大航海時代に新天地として注目されたアメリカ大陸に移住してきたのです。迫害の歴史を持つアーミッシュの人々は、家族を最も重要な社会単位とし、外部社会との接触を極力避けて生活しています。現代社会にとって不可欠の存在と思われている電気、電話、テレビ、自動車などは、アーミッシュの人々にとって、自分達の生活に危険を及ぼす存在とされています。天然の食材や素材、有機農法で育てた農作物や畜産物を利用した食事や衣服を初めとする生活用品は、簡素ですが健康的で温かみのある手作りです。黒やグレーのズボンに白のシャツを着て山高帽をかぶった男性、長袖にロングスカート、白い小さな帽子をかぶった三つ編みの女性、移動や運搬手段としての馬車、小さな布切れをパッチワークして作られたキルトなど、自給自足で生活するための知恵が結集されているとともに、アーミッシュの人たちのコミュニティーのアイデンティティーを維持するためのものなのでしょう。また、教会を持たず、当番制で住民宅を礼拝の場とするという習慣にもアーミッシュの人々の結束力を感じます。 このような生活習慣は、江戸時代以前の日本でも見られたものです。しかし、明治維新の政策によって近代化の促進が重視され、欧米の進んだ技術が取り入れられる一方で、日本古来の伝統的な文化や風習が軽視される動きが現れました。その結果として欧米化した日本は、やがて食糧や衣料、燃料などを海外からの輸入に頼らざるを得ない国になってしまったのです。日本は資源が少ないために自給率が低いと言われますが、鎖国時代は自給自足が可能となっていました。自給自足の体制が失われたことによって、日本人の簡素な生活は徐々に失われ、さらに、敗戦後の高度経済成長を経て、経済大国となったことによって、豪奢な生活が当然となってしまったと同時に、家族や地域社会とのつながりを持てない人々が多くなったようです。 最近テレビや新聞で日常茶飯事に報道されている「いじめ」「幼児虐待」「尊属殺人」などは、家族を大切に思う心、他人への思いやりがあれば、起こるはずのない事件です。物質的に豊かであることを追求し、精神的な豊かさを忘れてしまったようです。アーミッシュの人々の生活を知るともに、日本でも自給自足の疑似体験ができる里山での生活を経験することは、現代社会に生きる多くの日本人にとって大切なことだと思います。
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〜Weekly Business News 2006年12月1日号掲載
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