アメリカ暮らしの子供の教育を考える
〜自然な日本語表現を身につけるためには

 

米日教育交流協議会

代表 丹羽筆人

 

幅広い年齢層との会話の機会を増やすことを心がけたい

「先生が食べられてから、皆さんが食べてくださいね。」

「えっ?先生が食べられちゃうの?どういうこと?」

「先生は食べられません。先生が食べてからという意味の敬語です。」

「では、『先生が来られました。』はどういう意味ですか。」

「先生が来たという意味の敬語です。」

「その意味もありますが、先生が来ることができたという意味もあります。」

「だったら、『先生が来れる』でいいじゃん。食べることができるは『食べれる』っていうし。」

「『来れる』も『食べれる』も、ら抜き言葉といって正しい日本語ではありません。」

「わけわかんな〜い。」

 これは小学生のクラスの授業中のやり取りです。そして、ら抜き言葉が正しくないことを教えると、それを忠実に守り、「先生が走れられる。」とか、「私、しゃべれられるよ。」というような言葉遣いをしてきて当惑したことがあります。また、「私を持っていって。」というような耳慣れない言葉遣いを聞かせてくれたり、年長者に向かっても「君」と呼んだりもします。本人にしてみれば、日頃使い慣れた英語の言い回しを日本語に変えただけなので、このような言葉遣いが間違っているのだという意識はないのです。

 日本語では、年長者に向かって「君」は使わないし、「あなた」というのも良くない。「○○さん」と名前で呼ぶのが正しい。また、親戚には「おじさん」とか「おばあさん」と呼んだり、学校では「先生」、クラブ活動では、「監督」「コーチ」、会社では「社長」「課長」などという肩書きで呼ぶことが普通である。というようなことは、日本に暮らしていれば教えなくとも自然に習得するものですが、日本の社会を知らなければ理解しにくいものです。

 これらの対応策として、日本に一時帰国して、学校に体験入学するのはもちろん良い経験となりますが、その際、学校の課題活動にも積極的に参加すること、学校外でのスポーツや音楽などの活動にも参加することを心がけ、さらに、近所や親戚などと交流することなども実行し、幅広い年齢層の多くの人と出会い、会話する機会を持つことが重要です。

 アメリカにおいても、日本語補習校に通学することはもちろん、日系人会、都道府県人会、その他の集まりには、積極的に参加することを心がけると良いでしょう。また、家庭内においては、日本語のテレビやビデオは有効な手段となります。親が見ている番組を通じて子供が自然に言葉を身につけていることもあります。そして、日本のマンガを読むこともお勧めします。もちろん内容を選ぶ必要もありますが、子供にとって大人の会話を吸収する機会になり得るのです。そして、難しい漢字や語句も覚えるという二次的効果もあります。

 

                〜Weekly Business News 2006年12月8日号掲載

 

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