「サマーキャンプ in ぎふ 2006」の活動内容


日本の山里生活で芽生えた
日本語学習の意欲
〜「サマーキャンプ in
ぎふ
2006を終えて

米日教育交流協議会
代表 丹羽筆人

 サマーキャンプの概要  
 名古屋から約30分。岐阜市の西隣にあるJR穂積駅から車で走ること約1時間。商店や住宅が少なくなり、田畑が目立つようになる。トンネルを何度も通り抜ける。その度に、
「お店や家が見えなくなった。」
「周りが山ばかり。」
「誰か住んでいる人いるの。」
などの声が飛び交う。声の主はこれから
2週間この地で滞在する「サマーキャンプ in ぎふ」の参加者たちだ。彼らはニューヨーク、ニュージャージー、ロスアンゼルス、テキサス、デトロイトなど全米の各地からやって来た小・中学生だが、日頃目にしたことのない光景に驚きは隠せないようだ。
 このキャンプの活動場所は岐阜県西部に位置する揖斐川(いびがわ)町。年々過疎化が進んでいるが、そこは失われつつある本来の日本の美しい自然、温かな人々の心、それらの人々が守ってきた文化と歴史がある貴重な場所だ。そして、滞米生活が長い子供達に本来の日本の自然、文化、歴史を五感で味わってもらい、日本語の学習の動機付けをすることを目的に企画し実施したのがこのキャンプだ。
 初めて開催した今年は、
7418(前期)728811(後期)の各期約2週間の日程で実施し、参加者は約2週間の開催期間中に自然体験(川遊び、渓流釣り、ハイキングなど)、伝統工芸体験(わら細工、草木染、木工など)、学校体験、スポーツ交流体験、地域交流体験、キッズ福祉セミナー、史跡ツアーなど多数のプログラムを体験学習した。  

元小学校を利用したユニークな宿泊施設  
 
キャンプ期間中は、廃校となった旧谷汲村の横蔵小学校の建物を改修したユニークな宿泊施設に9泊、150年前に建てられた歴史ある「かやぶき屋根」の古民家に3泊、そして、揖斐川町や池田町の住民宅での2泊のホームステイをして活動した。
 
9泊した宿泊施設は、3年前に小学校の校舎が改修されたもの。きれいな客室、食堂や浴室が完備されているが、外観はまさに学校、また各部屋のドアや窓、廊下や階段には懐かしい学校の雰囲気が残っている。因みにに客室は元教室、浴室は元理科室とのこと。当時のままの形で利用されている体育館は子供達が自由時間を過ごすお気に入りの場所になった。ちょっとした時間があれば、バスケット、サッカー、卓球などに汗を流していた。
 この施設の周辺は自然体験には最適の環境の緑溢れる山々と美しい川があり、ハイキング、川遊びや渓流釣りなどの活動を行った。山の木々や木の実を利用した作品作りをする木工体験、植物を利用して制作する草木染体験も近くの山が活動場所の一つとなった。また、施設の専用農園では農作業体験を行った。いずれの体験学習も講師は地元の住民の方々だ。渓流釣りや農作業体験の講師はこの施設の管理人のおじさん(社長さん)、木工体験や草木染の講師も同じ町に住むおじさんやおばさんたちだ。

人気者となって大満足の学校体験  
 
学校体験もこの施設滞在中に行った。今回は揖斐川町立谷汲中学校に4日間体験入学した。全校生徒数約100名という小さな学校だ。アメリカ在住の生徒の受け入れは初めてということで先生方は緊張しておられたようだが、生徒達は大歓迎ムード。
「こんなに人気者になったのは初めて。」「サインがほしいといわれてアイドル気分になった。」
と、参加者も大満足。学校では授業や給食、掃除などすべての活動を体験し、初日から部活動にも参加して日本の中学校生活を満喫した。この体験入学は学校側に特別なお願いを出したわけではない。つまり、授業を初めすべて通常通り行ってもらった。しかし、参加者は以前体験入学したことのある学校よりも温かさを感じたようだ。
 

 

多くの人々と触れ合った交流活動  
 この施設は小学生〜社会人の合宿場所として利用されている他、地元の人々の交流の場、また地元の住民を講師とした伝統工芸や農作業体験講座を企画・運営するNPO法人「ぎふいび生活楽校」の活動拠点ともなっている。実際、キャンプ期間中にも多くの人々が様々な目的でこの施設を訪れていた。そして、参加者はそれらの人々と触れ合う機会にも恵まれた。毎週火曜日の夜にこの施設の体育館で練習する小中学生のバレーボールチーム「ウィンディーズ」とは、スポーツを通じた交流を行った。同年代の子供達と生きた日本語を話す絶好の機会となったが、さらに目上の人に対する敬語や礼儀を学ぶこともできた。23日が同宿となった少年少女合唱団とは、キャンプファイヤーをしたり、一緒にお風呂に入ったりという交流を行い、日本の団体の合宿生活に触れることができた。
 地域交流体験は、地元住民宅でのホームステイという形で2泊
3日で行った。ホストファミリーの子供達とは初対面であるにもかかわらず、兄弟姉妹のように仲良くなり一緒に大はしゃぎして遊び、本当に楽しい時を過ごしていた。また、おじいさんやおばあさんとも同居する家庭では、核家族にはない温かさも感じることもできた。

 

本来の日本文化を体感
 期間中に3泊した古民家(かやぶき住宅)は元小学校の宿泊施設からさらに車で30分という山奥の地域旧坂内村にある。坂内は人口約600人でその大半が高齢者という典型的な過疎の地域だ。住民の多くは田畑を耕し、昔ながらの自給自足に近い生活が営まれている。キャンプ参加者はここで旬の野菜を食材に自炊の体験をした。日頃親のお手伝いすらしたことのない子供達だったが、最初は乗り気でなかったにもかかわらず、徐々に楽しくなって作業に熱中する様子が見られた。また、伝統的 ないろりも残っており、炭火を起こして川魚やもちを焼いて食べたのは貴重な経験となった。
 古民家のある坂内は工芸作家が住んでいる地域でもある。昔ながらの和紙や藁製品、竹製品を制作者に加え、ガラス製品や織物、染物の作家もいる。参加者はここでミニ藁草履の制作を体験した。講師(村のおばさん)から手ほどきを受けて、最初は難しかった細かい作業にも徐々に熱中して、いつもはおしゃべりな子供達が無言で藁草履つくりに取り組む姿が印象的だった。1足では満足できずもっと作りたいという声が聞こえるほど楽しい体験だったようだ。また、近所の神社の境内で鬼ごっごをしたり、夏での冷たい川に入ったりと山里ならではの遊びも体験した。夜は地元のおじさん
(旧坂内村の村長さん)からこの村の池にまつわる伝説の龍の昔話を聞いたり、花火を楽しんだりして過ごした。
 この住宅は台所やお風呂も現代のものとは違っている。もちろんガスや水道はあるが、台所は土間にあり、お風呂は昔の五右衛門風呂を現代風に換えた小さいもの、シャワーは簡易ポンプを湯船に入れて使う旧式のものであり、子供達を驚かせた。そしてトイレはもちろん外。昔話でしか見たことのないものだ。住宅の周辺には田んぼがあるだけで隣家は遠くにしか見えない。そして、裏は竹林の山だ。したがって夜は静かで真っ暗。カエルや虫の声、笹が風に揺れる音だけが聞こえる環境に怖さを感じた子もいたようだが、一晩寝たら自信もついて、建物の外にあるトイレにも一人で行けるようになった。精神的な成長にもつながったようだ。


教科書では学べない生きた学習
 
このキャンプの受け入れをコーディネートしてくれたのは、NPO法人「校舎のない学校」だ。岐阜県西部を拠点に、高齢者介護福祉のサポートを中心に多方面にわたって活動している。古民家体験とキッズ福祉セミナーは「校舎のない学校」のオリジナル企画だ。古民家のある坂内では一人暮らしの高齢者の存在を知り、このセミナーで介護の方法を学び、子供達は福祉の大切さを感じたようだ。
 史跡ツアーでは、この地域にある
1200年の歴史を持つ二つの寺「横蔵寺」と「華厳寺」を訪ねた。教科書ではなかなかイメージできない山の中に建てられた平安密教の寺院の特色を五感で感じることのできる貴重な体験となった。

予想以上に大きかったサマーキャンプの効果  
 このキャンプを企画し、この夏に初めて実施して良かったと実感したことは、まず第一に参加者が決して見せかけではない本来の日本の文化に出会うことができたことだ。豊かな自然の恵みを上手に利用して暮らす人々。その生活のための必需品として制作した工芸品、その季節に野山や畑に生育する旬の自然の食材を利用した料理、1本の川の水を上流と下流の人手で時間を決めて料理や洗い物、洗濯に使う習慣などが本来の日本の文化だ。参加者は山里の人々との交流の中で、それを十分に感じることができた。
 第二には、参加者が各種体験プログラムを通して、同年代の子供達を初め多くの地域の住民と交流することができたことだ。このキャンプ期間中に参加者は多数の幅広い年齢層の人々と出会った。そして、それらの人々とたくさん会話した。日頃の日本語での会話は、家庭内では両親または母親と行うだけ、他には週
1回の補習校にいる時のみという子供達にとって、多種多様な日本語を聞くことができ、自分の言いたいことをいろいろな人々に話してみる絶好の機会となった。

 第三には、参加者が精神的に大きく成長したことだ。小学生にとってはもちろん、中学生でも親元を離れた暮らしは寂しさを感じるだろう。また、合宿生活は時間的な制約もあり、食べ物の好き嫌いも通用しない。自由なアメリカ暮らしになれている子供にとっては特に辛かっただろう。それも、山里での不便な生活だ。日本といえば、最新のゲーム機器やソフトが揃い、楽しいアニメも多い。コンビニエンスストアも充実している。そんなイメージを持った子供達にとっては、つまらない時間もあったかもしれない。しかし、参加者はその生活に耐えた。というよりもそれを十分に満喫し、楽しさに変えた。結果として、彼らは精神的に大きく成長することができたのではないか。 
 最後にこれは目的を達成しただけであるが主催者にとってはもっとも喜ばしいできごとがあった。それは、参加者それぞれに日本語学習に対する意欲が芽生えたことだ。キャンプ終了後、参加者の保護者から届いた声がそれを裏付けている。
「確実に日本語に興味を示すようになりました。」
「日本語の本が読みたいと言い出しました。こんなことは初めてです。」
 そして、参加した子供達の口からは、
「もう終わりなの。帰りたくない。」
「また来年来ます。」
「今度は友達も連れてくるね。」
そんな声を聞きながら、今年のサマーキャンプが幕を閉じた。
「みんな。来年も待ってるよ。」

 

   

2006年度の思い出の写真集   2007年度プログラム案内 
 ホーム   ご意見・ご要望  

41649 Blair Drive, Novi, MI 48377  U.S.A. 
TEL : 1-248-346-3818  FAX : 1-248-668-8461
 

(C) 2006-2009 US-Japan Educational Exchange Council