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有意義な夏を過ごしませんか?
米日教育交流協議会
代表 丹羽筆人
夏休みに大きく変化する子供たち
もうすぐ夏休みが始まりますね。アメリカの学校の夏休みは2ヵ月半から3ヶ月という長きにわたるものです。その夏休みの計画を立てることには保護者の方々もとてもご苦労をされておられることでしょう。というのも、この休みをどう過ごしたかによって、お子さんの様子が大きく変わってしまうからです。私も夏休み後に再会した時の子供たちの大きな変化に目を見張ったことが多くあります。以下に夏休みの過ごし方によって生じた変化についての具体例を紹介します。
親元を離れて1ヶ月間のキャンプに参加した中学1年生のAさんのお母さんの話。「今までは本当に甘えん坊で、自分の身の回りのことすらしなかったのに、キャンプから帰ってきたら急に大人っぽくなったようです。お料理や後片付けのお手伝いや洗濯までしてくれるようになったんですよ。」
夏休み中、地元のコミュニティセンターでのデイキャンプに参加した小学3年生のB君のお母さんの話。「渡米して3ヶ月が経ち、ようやく現地校にもなじみ始めたのに夏休みに入り、せっかく身につけた英語はどうなってしまうのかなと思っていました。日本人のお友達の多くが里帰りする中、現地校に通学しているのと同様なペースで英語に触れさせたいと考えて地元のデイキャンプを選びました。日替わりでいろんなアクティビティがあり、子供も毎日楽しく通うことができ、英語力も向上しましたし、参加費用が安いのがとってもラッキーでした。」
夏休み中ずっと日本に里帰りした小学校6年生のCさんのお母さんの話。「日本で楽しく休みを過ごしたのは良かったのですが、現地校は夏休みの課題がなく、英語に触れる機会もほとんどありませんでしたので、アメリカに帰国してからが大変でした。せっかく身につき始めた英語力を取り戻すのに時間がかかりましたし、補習校で勉強していた漢字まで忘れてしまっていて、本当にショックでした。
これらは、ほんの一例ですが、夏休み中のお子さんの変化は著しいものがあります。せっかくの長い夏休みを有意義なものにしたいですね。
多種多様なサマーキャンプ
さて、アメリカでは夏休みの時期に各地でサマーキャンプが開催されます。それらの実施期間、形態、内容などは多種多様で、何を選択してよいかかなり迷ってしまうほどです。期間は2〜3日のものから1ヶ月以上のものまでありますし、形態は自宅から通う日帰りものや遠方での泊りがけのものがあります。内容はかなり多彩であり、サッカー、野球、バスケットボールなど特定のスポーツやバレエ、ピアノ、バイオリン、絵画などの技術を徹底的に伸ばそうというもの、数学や科学などの学力向上を図るものから、乗馬やカヌー、アーチェリー、クラフト、ポッタリーなど多種多様なアクティビティを日替わりで体験するもの、などがあります。
さらに、日本人学校や学習塾が行う勉強中心の夏期講習や語学学校の英会話レッスンなども加えると、日本人や日系人にとってのサマーキャンプのラインナップはかなりバリエーションに富んだものとなります。ますます何を選択しようか迷ってしまいますね。しかし、いろいろなキャンプがあるからといっても、すべて体験するというわけにはいきません。時間的にも経済的にも無理が生じてしまいます。
では、以下にサマーキャンプの上手な選択についてお話させていただきます。
渡米間もない子にはデイキャンプがお勧め
まず、滞米期間の短いお子さんにお勧めするのは現地校やコミュニティ、デイケアセンターなどが行っているデイキャンプです。こちらに参加する多くはアメリカ人の子供たちです。その子供たちと朝から夕方までともに過ごすことになるので、夏休みといえども現地校と似たような状況下で過ごすことができます。つまり、終日英語を使うことになり現地校で徐々に身につき始めた英語力を落とすことなく、むしろ向上させることもできるという効果があります。
アメリカには泊りがけのキャンプも多数ありますが、渡米間もない子供にアメリカの団体が主催する泊りがけのキャンプに参加させることはお勧めできません。まだ英語に自信をもてない状況では友人を作ることも難しく、性格によっては孤立してしまう可能性もあり、英語嫌いを引き起こす原因にもなりかねません。英語が不慣れなうちは、昼間は英語漬けの生活でも自宅では日本語という生活パターンがベターでしょう。さらに内容も英語学習中心ではなく、スポーツや音楽、絵画などお子さんの好きなことを行うキャンプをお勧めします。それらの活動を通じて、英語を聞き、話していくことが、無理なく生きた英語を学ぶのに効果的なのです。
もし、泊りがけキャンプを体験させたいということであれば、日本人学校や日本人・日系人が主催しているキャンプへの参加をお勧めします。主催者が日本人であるために、日本人の参加が多く、日本人スタッフが面倒を見てくれるので安心です。
英語力の向上と親離れの促進が期待できる泊りがけキャンプ
一方、アメリカ暮らしが1年以上でそこそこ英語もできるようになったお子さんには泊りがけのキャンプへの参加をお勧めします。アメリカの子供たちと寝食を共にすることによってさらなる英語力の向上を図ることができますし、日本人特有の控えめな性格から脱却し、積極性を養うことにも効果があります。できれば日本人の友達は誘わないで、単独参加させてみてください。日本人の友達がいると精神的には安心なのですが、どうしても日本人同士で固まって日本語を使ってしまうことが多いようです。すると、アメリカの子供たちとっては近寄りがたい存在に見え、生きた英語を聞いたり話したりするチャンスが少なくなってしまうのです。
また、小学校高学年以上であれば、渡米間もなくても泊りがけのキャンプをお勧めします。英語力に自信のないお子さんにとって、このようなキャンプは少し過酷かもしれませんが、英語を使わなければ何もできない(例えば食べることすら困るような)環境においては英語力の向上はもちろん、逆境にも耐えられる強さが生まれ、精神的な成長も期待できます。「かわいい子には旅させよ。」ということわざがあることを信じて、思い切って「子離れ」してみてはいかがでしょうか?
私が日本で行っていた中学生対象のアメリカでのサマーキャンプ参加者の話ですが、はキャンプ出発の前日くらいから参加するのが怖くなって大泣きしてお母さんを困らせ、行きの飛行機の中でもスタッフを困らせていましたが、到着するや否や元気を取り戻したどころかむしろ積極的に活動し、キャンプの最終日には家に帰りたくない、アメリカに残りたいと大騒ぎしてスタッフを困らせたという例もあります。
滞米が長い子や日本語嫌いな子には日本のキャンプがお勧め
次に、アメリカ生まれのお子さんやアメリカ暮らしが長くなり英語よりもむしろ日本語が弱いと思われるお子さんには日本の学校での体験入学や日本での泊りがけのキャンプへの参加をお勧めします。ただし、日本の学校での体験入学は、学年相応の日本語力のあるお子さんにはお勧めできますが、そうでなければ単なる外国からのお客様扱いで終わってしまいがちですし、学校側も受け入れに消極的な態度を見せることもありますのでお勧めできません。体験入学以外では、日本の団体が主催するキャンプもありますが、そのほとんどは日本の小中学生を対象としたものであり、日本語力の弱いお子さんにとっては、むしろフラストレーションを溜め、日本語嫌いとなるきっかけをつくってしまうことにもなりかねません。
そこでお勧めしたいのが、アメリカ在住者を対象として日本で行われるキャンプへの参加です。このようなキャンプには、アメリカ生活が長く、日本語力はそんなに高くないというような境遇の子供たちが多く参加しますので、主催者側も日本語があまりできない子供に対する配慮を十分に行います。参加する子供も日本語ができないというフラストレーションを溜めることがありませんし、同じ境遇ということにより助け合い精神も生まれます。日本語嫌いにすることなく、無理なく日本語に対する興味を持たせることができます。しかしながら、そのようなキャンプは今まではほとんどなかったのではないかと思われます。
私の設立した組織「米日教育交流協議会
(UJEEC) 」の主催する「サマーキャンプ
in ぎふ」は、アメリカでは体験することのできない日本特有の自然、文化、歴史を心と身体で感じ、無理なく日本語学習や日本文化の吸収を図ることのできる独自のプログラムで行われるキャンプです。親元を離れ、日本の山村での生活を体験することは、アメリカで暮らす子供たちには強い刺激を与えるものとなるはずです。
当協議会代表の私がアメリカでの教師生活の中で教えてきた子供たちから投げかけられた数々の疑問点「お寺と神社って何が違うの?」「しょうろう(鐘楼)って何?」「鮎というのはどんなお魚なの?それはおいしいの?」「たけのこは竹の子供って本当?」「日本のお城は何のためにあったの?」などは、あっという間に解決することはもちろん、日本の自然の美しさ、その自然とともに暮らす日本人の知恵、そして、日本という国が築いてきた歴史に心から感動し日本語をもっと学びたい、日本文化をもっと吸収したいという強いモチベーションとなることでしょう。
そして、このキャンプ参加者は、日本語力が向上することはもちろん、日本の山村に暮らす人々との交流によって日本人としてのアイデンティティが生まれ、また親元から離れた生活を経験することによる独立心が芽生え、さらに自然の中で身体を使うアクティビティにより肉体的にも成長するという効果を期待できます。
現状と目的を把握して無理のない計画を
お子さんの心と身体が大きく成長することのできる長い夏休み。そこでどう成長していくかは保護者の選択が決め手となるのです。お子さんの語学力や性格を冷静に見つめ、夏休みの間の目標をしっかり定め、スケジュールや内容に無理のない計画を立ててあげてください。
2006年春執筆 |